『医療は人生を示さない。』この言葉はある高名なお医者さんの言葉だ。このドクターは『ガンになったら、手術も抗がん剤治療も受けてはいけない』という趣旨のことをいつだかメディアで発言しておられた。それを耳にしてからというもの、何か、このドクターのことが文章で取りあげられたりするとどうにも捨て置けない感じがするようになった。ドクターの言及されることは、案外他のお医者さんにも事実としてわかっていることなのだろうと思える。しかし、そのことに触れると色々物議をかもすだろうと、敢えて誰もが触れないでいるようなタブーでも、この方は正面から苦もなく取り上げ、バッサリ袈裟懸けにする。快刀乱麻の如くある種の爽快感を覚える。

 医師であるご当人が『医療は人生を示さない』と言われる時に、どこか気持ちがねじれていて、屈折した心理から言われているのかというと、そうではないようだ。大いなる真実を坦々と述べているようにむしろ見える。『病気を治すのは医師(医学)ではなく、自然治癒力なんだから・・・』こんなことも言われ、ドクターはお医者さんの権威というものは、どうやら認めておられない。『抗がん剤治療など余計に患者を苦しめるだけ』とも言及され、まちがいなく医学会からは反感を持たれ、疎まれているだろうと思える。百も承知でやっていて、相当の勇気が要ることだけはわかる。

 医療関係者にとっては営業妨害にちがいない。医療関係者も儲けないと生きてはいけないわけで、近代医学の否定がとことん進むと大いに困るはずだ。ドクターを敵対視する医師はあまたいるにちがいない。ドクターが発言すると、唇の前に人差し指を立てて、『しーっ!!』とでも言いたいのではないか。だれが前に来ても、まったくお構いなしに見える点が、このドクターの凄い所に思える。覚悟がある人物なんだと得心できる。同じようにできる人は滅多にいないだろう。

 真実を坦々と述べることは実に難しい。遠慮したり、気負ったり、逆に気圧されたり、真実を述べようとすると、難儀な気分になることも多い。上記のドクターのようなわけにないかない。ただ、ひとたび教育の現場に係わるというのなら、真実は真実として坦々と述べるようでなければ、生徒と係わってはいけないように思える。教育関係者も医療関係者同様、儲けないと生きてはいけない。ドクターが『抗がん剤などで治療するから、どんどん悪くなる』と言っているわけだが、『どんどん生徒が悪くなるようなことを、教育現場の自分もやっていないかな?』この問いはどうも纏わりついてくる。考え始めると深みにはまりそうな話ではある。少し整理がいると思っている。

 真実をベースに生徒と係わっていくためには、まず手始めに『儲けるために教育をしている』という真実をまず偽らずに受け入れ、また、坦々を伝えていくことあたりから、始めることなのかな、とぼんやり思っている。(了)