プロスポーツの選手は、やはり練習法の開拓に余念がないと聞く。考えると、例えば選手が若い頃と、ベテランの域に達した時と、同じ練習が有効であるとは素人でも思えない。それぞれ自分のその時点の現状に合わせた、最もベストな練習法を模索するわけだろう。印象に残っている中に、古い話だが、大相撲の元横綱隆の里のウェイトトレーニングが思い浮かぶ。怪力この上ない、昭和50年代終わり、自他共に無敵と認めた横綱隆の里は、素質はありながら、なかなか芽が出ない力士だったそうだ。そこで自身の強みをさらに伸ばすために、当時の角界では異端とされかねなかったウェイトトレーニングに勇躍取り組んだ。そしてこの熱心な研究成果が、角界無双、金剛力の横綱誕生として結実したわけだ。

 また、隆の里の宿敵とも言えるライバルに、大横綱と言われ、後に国民栄誉賞を受賞した千代の富士がいた。実は、この最強とも言われた千代の富士に完全に勝ち越しているのが隆の里だった。他の誰もが歯が立たない屈強の横綱千代の富士が、隆の里には完敗を続け、控えで顔を見るのも嫌だと言わせたほどだという。それは、上記の新トレーニングで手に入れたパワーで、同じく力が売りの千代の富士にけしてひけをとらなかったことが勿論ある。その上、隆の里はライバル千代の富士の相撲をビデオに撮って、なんと、そのビデオテープが擦り減るまで見続け、千代の富士の弱点の研究に余念がなかったという。たぶん、明けても暮れても打倒千代の富士の研究で頭が一杯だったのだろう。ライバルを圧倒できたのには理由があったわけだ。

 一方でこの隆の里は、若くして10代で糖尿病を発病し、相撲取りとしては致命傷にもなりかねない、この病気との闘いを土俵の外では続けていたという。まずこの病気について学び、自身で治療法を研究して、節制して、ついには隆の里は糖尿病に克った。確か、その本人の闘病、克服経験を本にして出版していたと思う。ここでも非常に研究熱心な方だったことがうかがえる。自分などはこの力士は好きな横綱で、舌を巻くほど強い隆の里の相撲を見ながら、その強さの秘密が、他の誰も手をつけていなかった練習法に積極的に挑戦したことにあったと知り、また、食べなきゃいけない世界で、食べてはいけない病を克服した精神力の賜物だったことを知り、非常に感じ入った記憶がある。

 他にもスポーツで結果を残した選手からは、等しく同じような探究心が伺える。自分が強くなるためには、それは欠かせないものだ。探究心が採るべき探求法を導いてきて、その探求法が実践に繋がって反復されたときに、想像もできなかったくらい見違える選手が誕生したりする。それは職業人たるプロスポーツ選手なら飯の種にかかわることだ。だから、より最適な鍛錬法を探り出すために、時間もお金も惜しまず掛ける。勿論、プロスポーツの世界だけではない。どんな職業の道でも探求してなんぼ。世界で有名なトヨタのカイゼンも、職業人として当然の探求の結晶として側面があるだろう。われわれの立つ教育の道でも、要はどんな分野でも、生徒が探究心を深める機会を提供できたかどうか、ここに成否が掛かるのではないか。とすれば、まず、教師や講師に探究心が求められる。先生は、やっぱり探求してなんぼだと思う。(了)